お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ 感想

会社で働いていると先輩や上司から財産形成のお話をよく聞かせてもらえます。


そこで、計画的に貯金をしたいと考え、この「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方2015 知的人生設計のすすめ 」(橘玲著)を読んでみました。

 

本書は、2002年12月に発売された『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』(以下『黄金の羽根』)の改訂版です。

『黄金の羽根』は30万部を超えるベストセラーになり…
と書かれているように、ベストセラーとなった初版の内容を改定したものなので、タイトルに「2015」という数字が追加されています。

初版から、10年以上の月日が経ち、法改正等があったため内容が古くなっているところがあったようです。

しかし、基本的には原文を活かす形になっていて、手を入れなくても現在も通用する部分が多いようです。

そこで、初版当時から著者の述べていたことが時間が経っても陳腐化しないような普遍的な内容であったものと思います。

 

 

黄金の羽根とは

本書では、黄金の羽根を「制度の歪みから構造的に発生する”幸運”。手に入れた者に大きな利益をもたらす」と定義しています。

そして、本書は、この黄金の羽根を拾うことで、「国家にも、会社にも、家族にも依存せず」(経済的独立)「何ものにも束縛されない状態」(自由)で生きるのに十分な資産を持ち、「真に自由な人生を生きること」(目的)に「最短距離で目標に到達できる、少数の人しか知らない方法」(近道)を提案しています。

 

お金持ちの方程式

本書によるとお金持ちの方程式というものがあり、それは以下のようなものです。

人類の歴史に貨幣が登場して以来、お金持ちになる方法はたった3つしかありません。さらには、その方法はわずか1行の数式で表すことができます。


資産形成=(収入ー支出)+(資産×運用利回り) 
すなわち収入を増やし、支出を減らし、そしてそれによって(もしくは相続等それ以外の方法で)形成した資産を利率で運用することができればお金持ちになれるというのです。

なるほど、一般論としてはごく当たり前のことが書かれているように思います。

 

サラリーマンがお金持ちになる方法

サラリーマンがお金持ちになるのが難しい最大の理由は、税・社会保険料コストが大きいためです。年収1000万円のサラリーマンだと、実質税負担は250万円にもなります。こんな大金を毎年国に払っていたのでは、お金持ちになれるわけがありません。 
サラリーマンがお金持ちになるのが難しい理由として、上記方程式の支出の部分が税法により定められており、しかもこの額が多いということを指摘しています。

 

トヨタ自動車が賃金カーブを若手の取り分が多くなるように見直すと発表しました*1。

しかし、トヨタ自動車の例は一例にすぎず、「21世紀の資本論」がもてはやされるより随分前から、世間の若者たちは、格差が広がっていることを肌で感じていたのではないでしょうか。

また、今の40代以上の世代のような給料がもらえる保証は今後なく、さらには社会保険料の企業負担額が増えそれが個人の負担に反映され、一部の人々を除き多くの若者には財産形成が困難な世の中に既になってきているという意識が私(あまり若くないですが)たち若い世代に広がっているのではないでしょうか。

私の感覚では、このような風向きだと思います。

 

本書でかつて提案されていた、サラリーマンが金持ちになる3つの方法としての「年収を上げること」「ベンチャー企業に就職してストックオプションで儲けること」「業者からキックバックをもらうこと」は、筆者も現在は容易でないということを認める書きぶりです。

それでも私たち若者はお金持ちになれるのでしょうか。

 

では、どうやってお金持ちになるか

筆者は、まず、支出の見直しを提案しています。

上記方程式からすれば、収入が増えにくいなら支出を減らすことになるのは自明のことです。

筆者は、見直すべき支出として、住宅コストと生命保険をあげています。

 

住宅コストについては、持ち家か賃貸かという議論がなされており、地価の上昇が見込めないのであれば、賃貸に分があるという書きぶりです(建物の価値は購入時から下落しほぼゼロになるので無視します。)。

なぜならば、持ち家の価値が、持ち家の購入額を上回ったときに初めて持ち家による利益が出て、持ち家に分があると言えるところ、地価が上がる見込みは大きくないからです。

感情的には、自分の城が手に入るという価値が持ち家には付加されるようにも思いますが、あくまで上記方程式からすると、地価が下落していくということは、運用利回りが悪いということです。

賃貸であれば、賃料が適正であれば(不動産の収益率=年間賃料÷不動産価格ですから、賃料相場がわかれば、持ち家の収益率と賃貸のそれを比較できます。)、少なくとも地価の下落分の損は免れるというのです(プラスマイナスゼロ)。さらに住宅ローンを組んでいる場合(この場合がほとんどではないかと想像します)は、レバレッジをかけて投資しているのと変わらないので、地価の下落分の損は単純な地価の下落額より大きくなります。

 

また、生命保険についても最低限の組み合わせを選択し、支出を減らし、資産運用に回すべきという主張をされています。

 

個人事業主になる

サラリーマンは、必要経費の額が一定であり、自由な経費の申告は認められていません。そのため、所得が赤字化することはなく、所得税がきっちり徴収されます。

それに対し個人事業主は、確定申告を自分で行う分、収入と経費を合理的な範囲内で申告できるので、課税所得を減少させることができ、赤字で申告することも可能であると説きます。

法人化と組み合わせる

法人は定款の認証と登記により設立が可能で、資本金の額の下限がないため、書類さえ揃えれば、資本金が1円の法人を設立することも可能です。

法人化すれば以下のようなメリットがあるそうです。

所得税の発生しない範囲で給与を決定する

所得税の発生しない範囲で家族を雇用する

❸生活費を法人の経費に振替る

❹個人資産を法人名義で運用する 
ただし、サラリーマンには兼業禁止義務が課されているのが通常なので、❹のみを利用することができます。

設立した法人に貯金1000万円を貸し付け、法人が貯金し、赤字で決算した場合を考えます。

個人が貯金をし利子を得たときは、その利子には税金がかかります。

他方、法人が赤字決算をした場合、法人の貯金に生じる利子にかかる税金は戻って来るのです。

 

雑感

本書に書かれている方法は、私には、法人とサラリーマンでは、税金の負担が大きく異なり、法人を利用して税金の支払いを法的に可能な範囲まで減らすということが中心的な主張であったように思えました。

私は、法人を設立しようとまでは、本書を読んだだけでは思いませんでした。

しかし、資産運用の方法と、サラリーマンの負担している税金の種類や、税金の不合理性(例えば、株主が受け取る配当金は、法人に所得税が課税された後の利益を分配したものであるにもかかわらず、配当金にも所得税がかかるという合理的な説明が困難なしくみになっている。)について考えるきっかけになったので、黄金の羽根が拾えるようになったとは思いませんが、読む価値のある本であると感じました。